
はじめに
外国人材採用を進める企業が増える中、「採用までは順調だったが、受入れ後に現場でトラブルが発生した」という声を耳にすることがあります。
特定技能外国人や技能実習生などの外国人材受入れでは、在留資格や住居準備、日本語教育などに注目が集まりがちです。
しかし実際の現場では、
- 指示が伝わらない
- 人間関係がうまく築けない
- 日本人社員が戸惑う
- 早期離職
といった課題が発生します。
その原因は外国人材だけにあるとは限りません。
むしろ、外国人材受入れを成功させる企業ほど、日本人社員への説明と受入れ体制づくりを重視しています。
今回は外国人材採用を成功させるために、日本人社員へ事前に伝えておきたいポイントについて考えていきます。
外国人材受入れで重要なのは「外国人教育」と共に「受入れ側の準備」
なぜ日本人社員への説明が必要なのか
外国人材受入れについて相談を受ける際、「外国人材への教育は何をすればよいですか」という質問を受けることがあります。
もちろん外国人材への教育は重要です。
しかし、同等以上に重要なのが受入れ側の準備です。
外国人材が毎日接するのは経営者や人事担当者ではなく、同じ職場で働く日本人社員です。
そのため現場の理解が足りないと、
- コミュニケーション不足
- 誤解や偏見
- 指導方法のミスマッチ
につながる場合があります。
外国人材受入れでよくある現場トラブル
1. 「言ったつもり」が伝わっていない
日本人同士では通じる、
- いい感じでやっておいて
- 見て覚えて
- 空気を読んで
という表現。
「言ったつもり」が伝わっていないケースもありえます。
または外国人材にとっては意味が分からない場合があります。
曖昧な言葉や言い方は便利なので意識なく使ってしまいがちですが、現場トラブルの原因になりやすいため注意が必要です。
2. 外国人材だけが悪いと思ってしまう
仕事でミスが起きた際、「日本語が分からないから」と考えてしまうケースがあります。
しかし実際には、
- 指導方法のミスマッチ
- 説明不足
- 確認不足
が原因である場合も少なくありません。
- 簡単な日本語(単語)
- 優しい言い方
- 端的に伝える
を座学や日常の指導時に心掛けると良いでしょう。
また、図や写真(絵)で一緒に説明・指導することも良いでしょう。
3. 制度を理解していない
特定技能制度や技能実習制度では、企業側にも一定の責任があります。
現場担当者が制度を理解していないと、
- なぜ定期面談を行うのか
- なぜ生活支援が必要なのか
が分からず制度運用が形骸化するおそれがあります。
4. 習慣や価値観の違いへの理解が不足している
外国人材受入れでは、日本語力や業務スキルだけでなく、生活習慣や価値観の違いが職場でのコミュニケーションに影響することがあります。
例えば、
- 宗教上の理由による食事や礼拝への配慮
- 家族との関わり方に対する考え方
- 時間に対する感覚
- 報告・相談のタイミング
- 上司や年長者との接し方
などは、日本で育った方の感覚とは異なる場合があります。
もちろん、これらは国籍だけで決まるものではなく、個人の考え方や育った環境によっても大きく異なります。
しかし職場側がこうした違いの可能性を理解していないと、「なぜそうするのだろう」 「常識が通じない」といった誤解につながることもあります。
外国人材受入れでは、相手を特別視するのではなく、価値観や生活背景の違いがあることを前提に、お互いを理解しようとする姿勢が大切です。
日本人社員に伝えておきたい5つのポイント
1. 外国人材も同じ職場の仲間である
外国人材は特別な存在ではありません。
国籍は違っても同じ職場で働く仲間です。
過度な特別扱いも、距離を置く行為も望ましいものではありません。
まずは職場の一員として迎える意識を共有しましょう。
2. 日本語力と仕事の能力は別である
日本語に不慣れでも、
- 技術力
- 学習意欲
- 責任感
を持つ外国人材は数多くいます。
言葉だけで評価してしまうと、本来の能力や将来性を見落としてしまうかもしれません。
3. 「分かった?」ではなく、説明してもらう
外国人材の中には、「分かりません」と言いづらい文化的背景を持つ方もいます。
そのため、「理解できましたか」ではなく「どのように理解したか教えてください」と確認した方が誤解を防ぎやすくなります。
4. 制度を理解しておく
特定技能外国人や技能実習生を受け入れる際は、
- 在留資格(制度の概要):できる仕事、できない仕事の理解
- 支援内容(支援義務):必要なフォロー
- 制度導入(外国人材導入)の背景:会社の状態や願い
- 相談窓口(体制):問題の解消・解決方法の模索
について現場責任者を始め、周囲の社員にも共有しておきましょう。
制度理解はコンプライアンスにも直結、受入れ後のトラブル防止にもつながります。
社員の理解と共感を得て、強い味方になってもらいましょう!
5. お互いに学ぶ姿勢を持つ
受入れは一方通行ではありません。
外国人材も日本の文化を学びます。
同時に日本人社員も相手の文化や価値観を知ろうとすることで信頼関係が生まれます。
副次効果(社員の意識向上等)も十分期待できます。
(※副次効果はまた別の機会にお話したいと思います)
特定技能外国人の定着率向上にもつながる
基本的に転職が難しい技能実習制度と違い、特定技能や高度専門職、技術・人文知識・国際業務といった在留資格は転職可能です。
外国人材受入れで重要なのは採用だけではなく定着も重要です。
受入れ体制が整っている企業では、
- 人間関係が良好になる
- 相談しやすくなる
- 早期離職を防ぎやすくなる
といった効果が期待できます。
結果として技能や知識、日本語力が向上し、採用コストを含めた人件費の効率的な運用が実現できます。
外国人材定着支援は外国人材本人への支援だけでなく、日本人社員への理解促進から始まるといえるでしょう。
外国人材受入れで見落とされがちな「日本人社員への説明」
外国人材受入れでは、
- 在留資格
- 住居準備
- 生活支援
- 日本語教育
などに注目が集まりがちです。
しかし実際に外国人材が最も長い時間を過ごすのは職場です。
そして毎日関わるのは、人事担当者や経営者ではなく、現場の日本人社員です。
どれだけ優秀な外国人材を採用しても、現場の理解がなければ職場への定着は難しくなります。
外国人材受入れの成功は、外国人材本人への支援だけではなく、日本人社員側の準備によっても大きく左右されるのです。
外国人材定着の鍵は受入れ体制にある
外国人材採用の成功は採用人数だけでは測れません。
重要なのは、「長く活躍してもらえる環境を整えること」です。
受入れ体制が整っている企業では、
- 相談しやすい
- 人間関係が良好
- ミスや誤解が少ない
- 定着率向上
といった好循環が生まれます。
外国人材の定着支援は、外国人材本人だけではなく、職場全体で取り組むものといえるでしょう。
受入れ前の社内説明会で共有したい内容
外国人材受入れ前には、現場向け説明会を実施することも有効です。
説明内容としては、
- 利用(導入)する制度の概要
- 配属予定人材のプロフィール
- 出身国の基礎情報
- コミュニケーション上の注意点やポイント
- 宗教や文化の違いと理解
- 日本語での伝え方のコツ
- 社内相談窓口
などが考えられます。
受入れ前に不安や疑問を解消できると、その後の受入れもスムーズになります。
よくある質問
Q. 外国人材受入れ前に社内説明会は必要ですか?
法令上の義務ではありませんが、受入れ後のトラブル予防や職場理解促進の観点から実施を検討する価値があります。
Q. 外国人材は日本人より離職しやすいのでしょうか?
一概にはいえません。
職場環境や人間関係、将来への見通しなど様々な要因が影響します。
Q. 特定技能外国人を受け入れる際に現場担当者が理解しておくべきことは何ですか?
制度概要や支援体制や義務、相談窓口などについて基本的な理解を持つことが望ましいでしょう。
Q. 外国人材とのコミュニケーションで大切なことは何ですか?
曖昧な表現を避け、具体的に伝えること、短い文章で単純な単語を使用すると良いでしょう。
そして最後に理解できたかを確認(指示の説明をしてもらう等)することが重要です。
まとめ
外国人材受入れで発生するトラブルは、外国人材本人だけが原因とは限りません。
実際には、日本人社員側の理解不足や準備不足が影響しているケースもあります。
特定技能外国人や技能実習生を受け入れる際には、
- 制度を理解する
- コミュニケーション方法を見直す
- 現場説明会を実施する
- 相互理解を促進する
ことが重要です。
外国人材採用を成功させるためには、採用活動だけではなく「受け入れる側の準備」にも目を向けてみてはいかがでしょうか。
免責
※本記事は執筆時点で公表されている法令、制度、行政機関等の情報をもとに作成しています。制度内容や運用は変更される場合がありますので、最新情報は出入国在留管理庁、厚生労働省その他関係機関の公表情報をご確認ください。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別案件に対する法的助言、行政手続きの代理、その他専門的判断を提供するものではありません。実際の手続きや制度運用にあたっては、行政書士、社会保険労務士その他の専門家へご相談ください。