リトリート 「ヨガリトリート」

3年ほど前からヨガ活している。念のため「ヨガ活」をググったら、ちゃんとヒットした。
すでに認知されているコトバだと確認できたので、使うことにした。

念のため説明すると、ヨガ(ホットヨガ、ピラティス含む)を日常的かつ意欲的に行っている個人および団体、ということになるだろうか。私もいよいよ「〇〇活」の一員となったわけだ。

世界のヨガリトリート キラキラすぎ?

某ヨガスタジオの会員となり、週3回ペースでヨガスタジオに通っている。

昨年くらいからスタジオに「ヨガリトリート」に関する案内が度々掲示されている。
内容は通常のプログラムとは別に、スタジオを離れて風光明媚な地で1日または数日宿泊し、ヨガと瞑想、プラスαを集中して行う。某ヨガスタジオのオリジナル企画であり、その参加者を募っていた。

すでに満席となり「キャンセル待ち受付中」と記載された企画もあり、なかなかの盛況ぶりだ。新企画というより、コロナ渦中には自粛していた「ヨガリトリート」が再開したのかもしれない。

リトリートの語源はリトリートメント(Retreatment)で、「日常生活から離れてリフレッシュする時間をもち、心身ともにリセットする」といった意味で使われているようだ。
その意味では、「ヨガと瞑想」はリトリートの王道といえそうだ。

世界中の2800余りのヨガリトリート主催者が企画している、様々なヨガリトリートを検索して予約できるサイトがある。

試しにのぞいてみると、

  • 南エーゲ海のセリフォス島での7日間のビーガンヨガと禅リトリート
  • スペインバレンシア、コスタブランカのアリカンテでヨガなどを楽しみながらリラックスして若返る6日間のウェルネスリトリート
  • エジプト紅海ハルガダでヨガと瞑想を伴うイルカと踊る8日間

などなど。

タイトルを一読しただけでは理解が及ばない、手強いヨガリトリートの数々だ。
こんなに盛り沢山で、本来のリトリートができるものだろうかという疑念がふわりと浮かんだが、ハードな日常生活をリセットするためにはこれくらいのご褒美が必要なのかもしれない。

日本も負けていない。

沖縄の静かな石垣島で過ごす7日間の瞑想とヨガのリトリート」では、午前4回のヨガとヨガ哲学のクラス、午後5回の講義とキールタンヨガと5 回のガイド付きツアー、ガイド付きアクティビティと訪問、温泉のご利用と体型に合わせた豊富な種類の浴衣/スリッパ、とある。

因みに「キールタン」とはヨガの瞑想実践法の1つで、音楽を使って音に精神を集中させる瞑想のテクニックの一種。
指導者の唱えるマントラの後に、参加者がコール・アンド・レスポンス形式(呼びかけと応答)でマントラを繰り返し詠う。
ヨガでいう「マントラ」は、言葉という音の波動を響かせて身体全体でその波動を感じる。
主にOM(オーム)というマントラを唱える。

指導言語が英語とあるので対象は日本人ではなく、インバウンドの外国人ツーリストのようだ。
ヨガリトリートサイト内の指導言語検索でも英語、ドイツ語、フランス語、スペイン語、オランダ語が対象で、ヨガリトリート界における日本の世界進出はまだ始まったばかりかもしれない。

ヨガリトリートことはじめ

ヨガ活中の私もこの状況を看過するわけにはいかない。

このサイトを検索しまくった結果、「バリ島タバナンでの瞑想とヨガリトリートでバリの文化を体験する 4 日間」という比較的シンプルな企画を発見。
内容を精査したところ、プログラムの内容はもちろん費用面・日程面ともクリアしているので、初ヨガリトリート体験を決めた。

初ヨガリトリートを行うタバナン県はバリ中西部に位置し、緩やかな斜面にライスガーデンが延々と広がるバリ最大の稲作地帯だ。タバナン県にはタナロット寺院やウルン・ダヌ・ブラタン寺院など観光地としても有名な寺院があるが、全体としてはのどかな田園地方という印象だ。

タバナン県のある村で、日本的な言い方をすると「村おこし」を目的としたヨガリトリートを行うホテルやヴィラ、バンガロー、ゲストハウスなどの施設が増えているという。
外国人ツーリストがホテルやヴィラなどに滞在する以外の選択肢にホームステイもある。

ホームステイでは、地元の家族の家に滞在し、村の日常生活を見聞きして実際に体験したいというゲスト向けに用意されている。それはホームステイ先の収入を助け、外国人ツーリストの滞在により地元の収入にもつながる。

私は宿泊先としてバンガローを選んだ。

敷地内に10棟ほどのバンガローの他、レストラン、ヨガスタジオ、スパ施設、プールが用意されている。
広大な敷地ではないが、緩やかな斜面にバンガローが点在し、トロピカルな樹木や花々が豊かな彩りを添えている。

バンガローは簡素ではあるが、エアコン・Wi-Fi・温水シャワー完備。清潔で居心地が良い。

盛りだくさんのプログラム

到着翌日からヨガリトリートがスタートした。

プログラムは次の通り。

08:00 – 09:30
朝のヨガと瞑想のセッション

09:30 – 10:30
朝食、朝のフレッシュジュース

11:00 – 12:30
村のアクティビティ

13:00 – 14:00
ランチ

16:00 – 17:30
午後のヨガと瞑想のセッション

17:30 – 18:30
村の散歩、村のアクティビティ

19:00 – 20:00
美味しいディナーと軽いサラダ

リトリートの費用は、3泊4日バンガロー泊、全食事つき、1日2回のヨガとすべてのプログラムが含まれ約65,000円、2名だと約85,000円。

ホームステイを選ぶと約38,000円、共有バンガローだと約43,000円となる。

共有バンガローとは、複数人が同じバンガローに宿泊するもの。同室者は未知なわけで躊躇するが、ヨガリトリートの世界では珍しいことではないようだ。

費用は現地通貨なので、当然記載した金額はレートによって前後する(2024/4/20の金額)。
また、ヨガリトリートの費用はそれこそ千差万別で、この費用が平均的とは言い難い。

たとえば、同じバリ島で同じような日程・プログラムでも、豪華なヴィラに滞在するタイプだと10~20万円は普通だし、逆に2段ベッドに共同生活するといったリトリートだと驚くほど安価だ。

1ヵ月間アンチエイジングを目的とするヨガリトリートは、なんとなんと100万円越えだった。

食事はベジタリアン、ビーガン、ダイエットメニュー、通常の食事から選ぶことができる。

私は「通常の食事」をお願いした。

「通常の食事」でも、とても健康的だ。
野菜たっぷりだし、通常のインドネシア料理は揚げ物が多いが、油分は控えめで焼いたり蒸したりと調理法にも配慮している。
何よりもとても美味しい。毎食100%フレッシュジュースとフルーツサラダが添えられているのも嬉しい。

想定外だ!

通常、ヨガリトリート主催者単位でヨガや様々なアクティビティを行う。

ところが今回、到着後主催者から私が申し込んだ日程のヨガリトリートの参加者は、私ひとりだけだと告げられた。
そのため朝夕のヨガのみ、他の主催者の参加者に合流することになるとのこと。
まあ、此の地ではありがちなことなので、あっさり受け入れる。

強制参加させられた他主催者のヨガスタジオは高台にあり、広く開放的で景観が素晴らしい。

他主催の参加者は10名くらいで、全員英語圏あるいはヨーロッパ系の方々のようだ。
ちょっと、いや、かなり居心地が悪かった。というのも、彼らは何人かのグループ単位で参加しているらしく、加えてすでに数日、同じ宿泊場所で行動を共にしているので和気あいあい感が伝わってくる。
そこにぽつねんと佇む私。

しかし、その疎外感もヨガが始める前まで。

インストラクターはインドネシア人で、ポーズの誘導は英語で行われるが、ヨガ活3年の実力?は逆境を乗り越えたのだった。
というか、大部分の参加者はほぼ初心者だったせいか、ヨガのポーズも基本的なもののみ。
日本で、呼吸法やら基本姿勢を厳しく指導されてきた成果が発揮できた。
それ以上に、初めてのびのびと無我の境地でヨガを楽しめたのだった。

朝夕のヨガは5名のインストラクターが交代で指導する。
近隣にも別の主催者による複数のヨガスタジオがあり、ローテーションで指導しているそうだ。
それぞれヨガの流派?があるらしく瞑想に重きを置く、あるいはひたすら同じ動作を繰り返すなど特色があり、これも初体験だ。

村のアクティビティ

1日のプログラムに「村のアクティビティ」がある。

この内容は、バリ音楽クラス、マッサージ、バリ武道、バリ・ヒンズー教の供物作り、ココナッツオイル作り、伝統的なハーブドリンク作り、地元の滝訪問とトレッキング、稲作(田植えなど)、バリ料理、バリ語レッスン、バリアン訪問など盛り沢山のアクティビティが用意されている。

しかし、期待しすぎてはいけない。
特定の曜日だけとか、指導者が多忙とか、参加者が少ないとか自由自在な理由により、選択肢はそれほど多くないのが現実だ。

私が参加した「村のアクティビティ」で、特に印象深かったのは「ココナッツオイル作り見学」。

村のとある民家を訪ね、ご夫婦が昔ながらの方法でココナッツオイルを作っている過程を見学する。
お二人の役割が明確に決まっていて、着々というより粛々といった感じでココナッツオイル作りは進む。
生産性よりもっと大事なものがあるに違いないと気付かせる、まるである種の神事のような印象。

その丹精込めた神聖なココナッツオイルを1本あたり約200円で5本購入した。

ボトルのスプレー部を除き高さ約7㎝。透明なオイルは保湿用で全身に使用できる。

さっそくワンプッシュして手に馴染ませてみる。しっとりと肌に吸い込まれていき、ギトギト感はまったくなし。
すぅーっと伸びるので少量で十分だ。天然のココナッツの甘い香りがふんわりと立ち上る。

黄色のオイルは料理用でオマケに付けてくれた。

100%純粋なココナッツオイルは透明なとろさら(とろり&さらり)とした液体だったのに、帰国してスーツケースから取り出したら乳白色と黄色の固体に変わっていた。

ぬるま湯に浸けると徐々に液体に戻るが、しばらくすると固体に変わってしまう。
日本の気候では本来の姿で有り続けるのは難しいらしい。

ヨガリトリート → 心身のリセット

今回のヨガリトリートで「日常生活から離れてリフレッシュする時間をもち、心身ともにリセット」できたか自問自答してみる。

「はい、できました。いえ、それ以上です。」と即答。なぜそれ以上か。

田園の中で自分勝手にヨガのポーズをとる自由、森の中のコテージでひとり目覚めひとり眠りにつく静寂、ココナッツオイル作りを呼吸するように黙々と熟している異国の日常。

帰国して日常生活に戻っても、その雰囲気を抜け出すことができない。

次はどこでヨガリトリートする?