はじめに
「特定技能外国人を受け入れたけど、制度運用って何をすればいいの?」
そんな疑問にお応えするのが今回のテーマ。
特定技能制度では、企業や登録支援機関に対して、定期的な届出・報告義務が課されており、場合によっては監査や指導も行われます。
今回は、制度運用に必要な手続きと、監査対応のポイントを丁寧に解説します。
特定技能に関する主な提出書類
| 用途 | 書類名 | 内容 | 提出タイミング |
|---|---|---|---|
| 在留資格の取得・変更 | 在留資格認定証明書交付申請書 | 特定技能外国人の基本情報、雇用条件などを記載 | 初めて特定技能で入国する前 |
| 在留資格の更新 | 在留期間更新許可申請書 | 現在の活動内容、雇用継続の有無など | 在留期間満了の約3か月前から |
| 雇用契約の確認 | 雇用条件書(参考様式第1-6号) | 業務内容、勤務地、給与などの詳細 | 雇用契約締結時、および変更時 |
| 支援計画の提出 | 1号特定技能外国人支援計画書 | 生活支援・日本語学習支援などの内容 | 在留資格申請時 |
| 雇用状況の報告 | 受入れ・活動状況に係る届出書 | 受入れ雇用状況に関する情報など | 3ヶ月に1回 |
| 受入機関の届出 | 特定技能所属機関概要書 | 企業情報、支援体制など | 初回受入時、変更時 |
| 資格取得のための証明書 | ・技能試験合格証明書 ・日本語能力試験合格証 ・技能実習生評価調書 | 入国資格を取得するための証明書 | 在留資格申請時 |
上記以外にも多数の書類があり、また、業種ごとに提出が必要な書類もあります。
書式は出入国在留管理庁等の公式サイトからダウンロードできます。 え?こんなにあるの!?と思いますので、一度、以下をクリックしてみてください。
提出期限
| 随時届出 | 事由発生日から14日以内 |
| 定期届出 | 対象年の4月1日から翌年3月31日までのものを翌年5月31日までに提出。四半期に1回の届出の場合、例えば、2025年1月1日から3月31日までを対象期間とした届出は同年4月15日までに提出する必要があります。 |
書類管理のポイント
報告に必要な書類は、日々の業務の中で記録・保存しておくことが重要です。
まとめて一気に作成しようと思うほど簡単ではありません。
管理すべき書類一覧
- 雇用契約書・労働条件通知書
- 履歴書、職務経歴書等
- 支援計画書・実施記録(面談記録、生活支援履歴など)
- 勤務実績表・給与台帳
- 社会保険加入証明書
- 住居・生活支援に関する契約書類
- 変更届出書類(住所変更、契約変更など)
実地調査・指導への備え
制度運用に問題がある場合、出入国在留管理庁やOTITから監査・指導が入ることがあります。
しっかりした管理と常日頃の書類作成とその準備が肝要です。
地方出入国在留管理局は、特定技能所属機関・登録支援機関に対して、外国人の受入れが適正に行われていることを確認する目的で実地調査を行っています。また、電話や郵送等で調査を行うこともあります。入管職員が当該調査を目的に事業所等を訪問することがありますので、調査への御理解、御協力をお願いします。
地方出入国在留管理局が、特定技能所属機関に対し、「報告徴収・立入検査」を行う場合に、これを拒んだり、虚偽の回答を行った場合には、罰則(30万円以下の罰金)の対象となります。また、地方出入国在留管理局が、登録支援機関に対し、「報告又は資料の提出」を求める場合に、これに応じず、又は虚偽の報告若しくは資料の提出を行った場合には、登録の取消しの対象となります。
実地調査等の結果から、法令違反等が認められた場合には、「指導・助言」を行うことがあるほか、特定技能所属機関(受入れ企業)の「欠格事由該当」や、登録支援機関の「登録の取消し」となる場合があります。
実地調査の主なチェックポイント
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| 支援の実施状況 | 支援計画通りに実施されているか |
| 雇用契約の適正性 | 契約内容と実務が一致しているか |
| 給与・待遇 | 日本人と同等以上の待遇か |
| 報告の履行状況 | 定期届出、随時届出が適切に行われているか |
| 書類の整備 | 必要書類が保存・管理されているか |
監査は事前通知の上で行われることが多いですが、抜き打ちの場合もあります。
よくあるつまずきポイント
- 報告漏れによる行政指導
- 支援内容の不履行(面談未実施など)
- 雇用契約と実務内容の不一致
- 書類の紛失・未保存
- 登録支援機関との連携不足
トラブルを防ぐための対策
制度運用を安定させるためには、基本的な実務運用の工夫が有効です。
- 支援担当者を明確にし、責任の所在をはっきりさせる
- 報告スケジュールを社内で共有し、リマインダーを設定
- 書類管理をクラウドや専用フォルダで一元化
- 登録支援機関を活用し、定期的に連絡を取り、情報共有を行う
まとめ
特定技能制度の運用には、届出・報告・調査対応といった法的手続きや準備が欠かせません。
これらを適切に行うことで、制度の信頼性を保ち、外国人材との良好な関係を築くことができます。