第6回:受け入れ後の実務運用(労務管理・生活支援)

はじめに

「採用も終わって、在留資格も取れた。さあ、いよいよ就業開始!」
でも、ここからが本番です。
特定技能外国人を受け入れた後は、労務管理・生活支援・報告義務など、企業としての責任ある運用が求められます。
今回は、受け入れ後に必要な実務対応を、現場でのポイントを交えながら丁寧に解説します。

労務管理の基本

特定技能外国人は、労働者として雇用契約を結ぶ存在です。
労働基準法などの一般的な労働法令が全て適用されます。
改めて以下に列挙しますが、日本人労働者と同じ労務管理になりますので、特段難しいことはありません。

労務管理のポイント

  1. 雇用契約の遵守
    → 契約内容(給与・勤務時間・休日など)を守ることが基本。
  2. 給与の適正支払い
    → 日本人と同等以上の待遇が求められます。産業別・勤続年数別の平均賃金の比較も参考になりますね。
    [第6回特定技能制度及…| 出入国在留管理庁]
  3. 社会保険の加入
    → 健康保険・厚生年金・雇用保険への加入は必須。
  4. 労働時間・残業管理
    → 時間外労働の管理と36協定の締結も必要。
  5. 安全衛生教育の実施
    → 業種に応じた安全教育を定期的に実施。

生活支援の実務

特定技能1号では、外国人材の日常生活の支援が義務付けられています。
支援は企業が自ら行うか、登録支援機関に委託する方法もあります。

主な生活支援内容

支援項目実務内容
住居の確保アパート等の契約支援、保証人の手配など
公的契約支援銀行口座・携帯電話の契約サポート
生活オリエンテーションゴミ出しルール、交通機関の使い方、災害対応など
日本語学習支援教材提供、日本語教室の紹介など
相談対応職場・生活に関する悩みの聞き取りと対応
社会交流支援地域イベントへの参加促進など

これらの支援は、出入国在留管理庁が掲げる「共生社会の実現」に向けた取り組みの一環です。
[外国人材の受入れ及び…社会実現に向けた取組]

届出・報告

企業または登録支援機関は、定期的に入管やOTITへ報告を行う義務があります。

報告内容の例

随時届出
【受入れ機関の届出】※違反の場合、指導や罰則の対象
・特定技能雇用契約の変更、終了、新たな契約の締結に関する届出
・支援計画の変更に関する届出
・登録支援機関との支援委託契約の締結、変更、終了に関する届出
・特定技能外国人の受入れ困難時の届出
・特定技能雇用契約及び1号特定技能外国人支援計画の基準等を定める省令の基準不適合に係る届出
【登録支援機関の届出】※違反の場合、指導や登録の取消しの対象
・登録の申請事項の変更の届出
・支援業務の休廃止の届出

定期届出 ※違反の場合、指導や罰則の対象
・特定技能外国人の受入れ・活動・支援実施状況に関する届出
(受入れ状況:特定技能外国人の受入れ総数、氏名等の情報、活動日数、場所、業務内容等)
(活動状況:報酬の支払状況、離職者数、行方不明者数、受入れに要した費用の額等)
(支援実施状況:相談内容及び対応結果等)
※支援計画の全部の実施を登録支援機関に委託した場合は、受入れ機関と登録支援機関が連名で届出を行う。
【提出期限】
対象年の4月1日から翌年3月31日までの受入れ・活動・支援実施状況について、翌年4月1日から5月31日までに提出

随時報告 【登録支援機関のみ】※違反の場合、指導や登録の取消しの対象
・1号特定技能外国人支援計画の実施における特異事案報告
(支援計画の実施が困難となったとき、支援の全部委託を受けた特定技能所属機関の基準不適合を把握した場合等)

書類の整備と記録の保存が重要です。登録支援機関に委託することで省力化が可能になります。
企業が自社で支援を行う場合は、支援計画に基づいて、すべての支援項目を漏れなく実施・記録・報告する必要があります。

トラブル防止のポイント

受け入れ後に起こりがちなトラブルを未然に防ぐためには、以下のような対応が有効です。

よくあるトラブルと対策

トラブル例対策
コミュニケーション不足職場の言語表示化、日本語教育の強化、通訳の配置、異文化理解の機会創出
給与・待遇の不満契約内容の明示と定期的な確認、目標の設定、評価基準の開示
生活面での孤立地域交流の促進、相談窓口の設置、異文化理解の機会創出
支援内容の不履行登録支援機関との契約内容の明確化

自社支援の実務対応

  • 支援担当者の配置(外国人材との面談・記録)
  • 支援内容のマニュアル化
  • 外部専門家との連携(通訳、法律相談など)

自社支援はコスト面で有利と考えて検討される企業も多いですが、担当者や運用負担が大きいため、しっかりとした体制整備が不可欠です。

まとめ


受け入れ後の運用どうしよう!? まずはお気軽にご相談ください!