第3回:受け入れまでの流れを理解しよう(制度導入のステップ)

はじめに

「特定技能制度、うちの会社でも使えそう。でも、実際にどうやって受け入れるの?」
そんな疑問にお応えするのが今回のテーマ。制度の導入には、いくつかのステップと必要な書類・手続きがあります。
出入国在留管理庁(ISA)のHPにも受入れ機関(外国人を受け入れる企業)向けの「雇用までの流れ」が掲載されていますが、当コラムでは実際に企業が行う検討や選択、実務を意識して記載します。
今回は、制度導入の流れをステップごとに整理し、初めての企業でも迷わず進められるように解説します。

特定技能制度導入の全体フロー

以下が、特定技能外国人を受け入れるまでの基本的な流れです。

ステップ内容関連機関
① 受け入れ方針の決定業種・職種の確認、社内体制の整備自社
② 登録支援機関の選定(または自社支援体制の構築)支援計画の作成登録支援機関・OTIT
③ 外国人材の選定試験合格者または技能実習修了者の採用海外送出機関・国内紹介会社
④ 雇用契約の締結労働条件通知書・雇用契約書の作成自社
⑤ 在留資格「特定技能」の申請出入国在留管理庁への申請入管(出入国在留管理庁)
⑥ 在留資格認定・入国在留カード交付、入国入管・空港
⑦ 就業開始・支援開始生活支援・労務管理・報告義務自社・登録支援機関

ステップ①:受け入れ方針の決定

まずは、自社が特定技能制度を活用できるかを確認しましょう。

チェックポイント

  • 自社の業種が16分野の対象業種に該当するか
  • 外国人材に担当してもらう職務が制度上の職種に含まれるか
  • 自社が外国人を受け入れられる基準があるか(社内に生活支援・相談対応などの支援体制があるか)
  • 自社が受け入れ機関となるための義務を履行できるか確認

受入れ機関(受け入れる企業)が外国人を受け入れるための基準

  1. 外国人と結ぶ雇用契約が適切(例:報酬額が日本人と同等以上)
  2. 機関自体が適切(例:5年以内に出入国・労働法令違反がない)
  3. 外国人を支援する体制あり(例:外国人が理解できる言語で支援できる)
  4. 外国人を支援する計画が適切(例:生活オリエンテーション等を含む)

受入れ機関(受け入れる企業)の義務

  1. 外国人と結んだ雇用契約を確実に履行(例:報酬を適切に支払う)
  2. 外国人への支援を適切に実施
    → 支援については、登録支援機関に委託も可。全部委託すれば上記3も満たす。
  3. 出入国在留管理庁への各種届出

ステップ②:登録支援機関の選定

特定技能1号の受け入れには、外国人材への支援が義務付けられています。
支援は「自社で行う」か「登録支援機関に委託する」かの選択が可能です。
義務的支援だけでも以下のようにあり、多くの中小企業では自社で行うのは難しく、当コラムでは登録支援機関を利用することを前提に説明を続けます。
支援には「義務的支援」「任意的支援」があります。
登録支援機関はWeb検索でも探せますし、出入国在留管理庁(ISA)の登録支援機関登録簿でも探せます。
ISAの登録簿は表面的な情報しかなく、Web検索は信ぴょう性やマッチング精度を考えると、当社のような第三者のフィルターがより良い選択の手助けになると考えます。

義務的支援10項目

  • 事前ガイダンス
    雇用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前又は在留資格変更許可申請前に、労働条件・活動内容・入国手続・保証金徴収の有無等について、対面・テレビ電話等で説明。
  • 出入国する際の送迎
    ・入国時に空港等と事業所又は住居への送迎。
    ・帰国時に空港の保安検査場までの送迎・同行。
  • 住居確保・生活に必要な契約支援
    ・連帯保証人になる・社宅を提供する等。
    ・銀行口座等の開設・携帯電話やライフラインの契約等を案内・各手続の補助。
  • 生活オリエンテーション
    円滑に社会生活を営めるよう日本のルールやマナー、銀行口座開設、交通ルール、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応等の説明。
  • 公的手続等への同行
    必要に応じ住居地・社会保障・税などの手続の同行、書類作成の補助。
  • 日本語学習の機会の提供
    日本語教室等の入学案内、日本語学習教材の情報提供等。
  • 相談・苦情への対応
    職場や生活上の相談・苦情等について、外国人が十分に理解することができる言語での対応、内容に応じた必要な助言、指導等。
  • 日本人との交流促進
    自治会等の地域住民との交流の場、地域のお祭りなどの行事の案内や参加の補助等。
  • 転職支援(人員整理等の場合)
    受入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝いや、推薦状の作成等に加え、求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続の情報の提供。
  • 定期的な面談・行政機関への通報
    支援責任者等が外国人及びその上司等と定期的(3か月に1回以上)に面談し、労働基準法違反等があれば通報。

ステップ③:外国人材の選定

外国人材は、以下のいずれかの方法で採用できます。

  • 海外からの直接採用(試験合格者)
  • 国内在住者の採用(技能実習修了者など)
  • 紹介会社、送出機関、登録支援機関の活用

採用には、基本的に対象業種ごとの技能試験日本語試験の合格が必要です。登録支援機関の利用がベターだと考えます。

ステップ④:雇用契約の締結と書類作成

雇用契約は、労働基準法に基づき、適正な内容で締結する必要があります。

必要書類

  • 雇用契約書
  • 労働条件通知書
  • 支援計画書(登録支援機関が作成)

雇用契約書は、在留資格申請時にも提出する重要書類です。作成、締結は登録支援機関が支援してくれます。
必要な支援は義務的支援の「事前ガイダンス」

ステップ⑤:在留資格「特定技能」の申請

出入国在留管理庁に対して、在留資格「特定技能1号」の申請を行います。

主な申請書類

  • 在留資格認定証明書交付申請書
  • 雇用契約書・支援計画書
  • 技能試験・日本語試験の合格証明書
  • 住居・生活支援に関する書類

最新の申請様式は、出入国在留管理庁の公式サイトで確認できます。作成、申請は登録支援機関が支援してくれます。

ステップ⑥:在留資格認定・入国

申請が認められると、在留資格認定証明書が交付され、外国人材は入国できます。
入国後は、在留カードが交付され、正式に就業が可能になります。
入国に関する支援も登録支援機関が支援してくれます。
必要な支援は義務的支援の「出入国する際の送迎」「住居確保・生活に必要な契約支援」

ステップ⑦:就業開始・支援開始

就業開始後も登録支援機関による支援があります。

支援の継続内容

  • 月1回以上の面談
  • 生活状況の確認
  • 必要に応じた通訳・相談対応

必要な支援は義務的支援の「生活オリエンテーション」「公的手続等への同行」「日本語学習の機会の提供」「相談・苦情への対応」「日本人との交流促進」「定期的な面談・行政機関への通報」「転職支援(人員整理等の場合)」

報告義務

  • OTIT・入管への定期報告(雇用状況、支援状況など)

よくあるつまずきポイント

  • 書類不備による申請却下
  • 支援計画の内容が不十分
  • 雇用契約と実務内容の不一致
  • 登録支援機関との連携不足

まとめ


特定技能の導入、何から始めればいい?まずはお気軽にご相談ください!