はじめに
「特定技能制度、うちの会社でも使えるのかな?」
そんな疑問を持つ中小企業の皆さんに向けて、今回は特定技能制度の対象業種と職種について、最新情報をもとにわかりやすく解説します。
制度の対象となる16業種の特徴や、受け入れの条件、注意点などを整理しながら、自社が該当するかどうかを判断するヒントをお届けします。
特定技能制度の対象業種(2025年5月時点)
特定技能1号の対象業種は、以下の16分野(業種)です。これらは、政府が「深刻な人手不足が認められる分野」として指定しています。
分野(業種) (2号移行・受入れ) | 受入見込数 (5年間上限) | 1号在留数 | 分野別加入協議会 | 従事する業務区分 |
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介護 (1号のみ) | 135,000人 | 52,955人 | 介護分野における特定技能協議会 | ・身体介護等 (注)令和7年4月21日、介護分野の上乗せ基準告示の改正により、訪問系サービスへの従事が可能に |
ビルクリーニング (1号・2号可) | 37,000人 | 7,187人 | ビルクリーニング分野特定技能協議会 | ・建築物内部の清掃 |
工業製品製造業 (1号・2号可) | 173,000人 | 49,320人 | 製造業特定技能外国人材受入れ協議・連絡会 | ・機械金属加工 ・電気電子機器組立て ・金属表面処理 ・紙器・段ボール箱製造 ・コンクリート製品製造 ・RPF製造 ・陶磁器製品製造 ・印刷・製本 ・紡織製品製造 ・縫製 |
建設 (1号・2号可) | 80,000人 | 42,744人 | 一般社団法人 建設技能人材機構 | ・土木 ・建築 ・ライフライン・設備 |
造船・舶用 (1号・2号可) | 36,000人 | 10,374人 | 造船・舶用工業分野特定技能協議会 | ・造船 ・舶用機械 ・舶用電気電子機器 |
自動車整備 (1号・2号可) | 10,000人 | 3,590人 | 自動車整備分野特定技能協議会 | ・自動車の日常点検整備、定期点検整備、特定整備、特定整備に付随する基礎的な業務 |
航空 (1号・2号可) | 4,400人 | 1,740人 | 航空分野特定技能協議会 | ・空港グランドハンドリング ・航空機整備 |
宿泊 (1号・2号可) | 23,000人 | 1,108人 | 宿泊分野特定技能協議会 | ・宿泊施設におけるフロント、企画・広報、接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供 |
自動車運送業 (1号のみ) | 24,500人 | 3人 | 自動車運送業分野特定技能協議会 | ・トラック運転者 ・タクシー運転者 ・バス運転者 |
鉄道 (1号のみ) | 3,800人 | 17人 | 鉄道分野特定技能協議会 | ・軌道整備 ・電気設備整備 ・車両整備 ・車両製造 ・運輸係員 |
農業 (1号・2号可) | 78,000人 | 33,739人 | 農業特定技能協議会 | ・耕種農業全般 ・畜産農業全般 |
漁業 (1号・2号可) | 17,000人 | 3,757人 | 漁業特定技能協議会 | ・漁業 ・養殖業 |
飲食料品製造業 (1号・2号可) | 139,000人 | 81,218人 | 食品産業特定技能協議会 | ・飲食料品製造業全般 |
外食業 (1号・2号可) | 53,000人 | 33,988人 | 食品産業特定技能協議会 | ・外食業全般 |
林業 (1号のみ) | 1,000人 | 0人 | 林業特定技能協議会 | ・林業 |
木材産業 (1号のみ) | 5,000人 | 0人 | 木材産業特定技能協議会 | ・製材業、合板製造業等に係る木材の加工等 |
業種ごとの受け入れ要件
業種によって、必要な試験や日本語能力の基準が異なります。代表的な要件は以下の通りです。
試験要件
- 技能試験:業種ごとに定められた技能評価試験に合格する必要あり。
- 日本語試験:原則として「日本語能力試験N4以上」または「国際交流基金日本語基礎テスト」に合格。
外国人技能実習制度の実習修了者の特例
技能実習2号および3号を良好に修了した者は、同業務に限り試験免除で特定技能1号に移行可能。
自社が該当するかの判断ポイント
「うちの業種は対象なのか?」を判断するためのチェックポイントを整理してみましょう。
チェックポイント一覧
- 業務区分や業種分類の確認
→ 自社の事業内容が、上記16分野(業種)のいずれかに該当するかを確認。 - 職種の具体化
→ 外国人材に担当してもらう業務が、制度上の職種に含まれているか。 - 受け入れ体制の準備
→ 労務管理、生活支援、教育体制などが整っているか。 - 登録支援機関との連携
→ 自社で支援が難しい場合は、登録支援機関の活用が必要。 - 試験・資格の確認
→ 対象業種の技能試験や日本語試験の内容を事前に把握しておく。
よくある誤解と注意点
特定技能制度は、明確なルールがある一方で、誤解されやすいポイントもあります。
注意すべきポイント
- 1号から2号への移行は全業種・業務区分ではない
→ 2号特定技能外国人を受入れ(以降)可能な事業所の日本標準産業分類を確認。 - 「技能実習生がいれば自動的に特定技能に移行できる」わけではない。
→ 修了状況や評価が良好であることが条件。もちろん手続きも必要です。 - 「登録支援機関に任せれば全部OK」ではない
→ 企業側にも支援義務がある。丸投げはNG。 - 「日本語が話せなくても働ける」わけではない
→すべての分野でN4以上で 自動車運送業のタクシーではN3以上の日本語力が求められる。
まとめ
特定技能制度の対象分野(業種)は、2025年現在で16業種。
それぞれに受け入れ条件や試験制度があり、自社が該当するかどうかをしっかり確認することが、制度導入の第一歩です。すべての運営を自社で行うのか、登録支援機関を利用するのかの検討も必要になってきます。
次回は、制度導入のステップについて、実際の流れを詳しく解説していきます!