はじめに
実習生が安心して働ける環境づくりは企業の責任です。
職場環境や生活環境が整っていないと、実習生の定着率やモチベーションが低下したり、ボタンの掛け違いによるトラブルの原因にもなります。
近年、多くの中小企業が人手不足の解消策として外国人技能実習生の受け入れを進めています。
しかし、実習生が安心して働き、生活できる環境を整えるには、単に「雇用する」だけでは不十分です。
初めて外国人材を受け入れる企業も実践できる「職場」と「生活」の環境整備のポイントを、具体例を交えてご紹介します。
職場環境の整備
受け入れ前の準備
実習生が来日する前に、以下のような準備を行うことが重要です。どれも監理団体と相談しながら準備できます。ただし、監理団体に任せきりではなく、自社でどれくらいできるのか確認し、足りないところは監理団体に手伝ってもらうくらいの感覚でいると良いでしょう。
- 実習計画の確認:
技能実習制度では、職種ごとに定められた「技能実習計画」に基づいて指導を行う必要があります。監理団体と連携し、内容を十分に理解しておきましょう。 - 社内説明会の実施:
受け入れ部署の社員に対して、実習制度の概要や文化的背景の違いを説明する場を設けることで、現場の理解と協力を得やすくなります。 - 通訳・翻訳体制の整備:
日本語が不自由な実習生のために、母国語でのマニュアルや掲示物の準備、翻訳アプリの導入なども有効です。
コミュニケーションの工夫
言葉の壁は、実習生にとって大きな不安要素です。
既存の日本人スタッフもまた、言葉の壁は不安要素でありストレスになります。
両者に負担が少なく、理解の促進とボタンの掛け違いを軽減するために以下のような工夫で、円滑なコミュニケーションを図りましょう。
- やさしい日本語の活用:
「ゴミを分けて捨ててください。」ではなく、「ゴミは種類ごとに分けてください。」や「ゴミを捨ててください。ゴミは種類ごとに分けてください。」など、簡単な言葉に変えたり、文を短く区切ったりすると理解しやすい傾向にあります。 - 定期的な面談の実施:
月に1回程度、実習生と1対1で話す時間を設けてみてください。プライベートにも配慮しつつ、話を聞く時間を作り、悩みや不安を話せる機会があることが浸透すると、問題を早期に把握できます。人間関係がポイントにもなるので、対応者を誰にするのかはよく検討すると良いでしょう。上司には話せないこと、先輩には話せないこと、異性には話せないこと等々、いろいろなケースがあります。 - ジェスチャーや図解の活用:
言葉だけでなく、写真やイラストを使った説明も効果的です。文字だけでは硬いものも図画があると和らぐことも多いでしょう。
教育・指導体制の構築
実習生は「学ぶために働く」立場です。教育体制の整備は、企業の責任でもあります。
- OJTの計画的実施:
作業をただ見せるのではなく、段階的に教えることが重要です。例:「1週目は見学、2週目は補助作業、3週目から実践」など。 - メンター制度の導入:
年齢の近い先輩社員を「相談役」として任命することで、実習生の心理的な安心感が高まります。 - 評価とフィードバック:
できたことをしっかり褒め、改善点は具体的に伝えることで、モチベーションの維持につながります。
ハラスメント・差別防止の取り組み
文化や宗教の違いを理解し、尊重する姿勢が求められます。
- 社内ルールの明文化:
「からかい」や「無視」もハラスメントに該当することを明確に伝えましょう。 - 相談窓口の設置:
実習生が安心して相談できるよう、第三者的な立場の担当者を決めておくと良いでしょう。 - 外部研修の活用:
監理団体や自治体が実施する多文化共生研修なども積極的に利用しましょう。
生活環境の整備
住居の確保と安全性
住まいは、実習生の生活の基盤です。以下の点に配慮しましょう。
- 寮の整備:
エアコン、冷蔵庫、洗濯機などの基本設備を整え、清潔で安全な環境を提供します。 - 通勤の利便性:
職場から徒歩または自転車で通える距離が理想です。 - 防災・防犯対策:
避難経路の説明や、火災報知器の設置、防犯に関する確認なども忘れずに。
生活支援体制の構築
日本での生活に慣れるまでには時間がかかります。以下のような支援が効果的です。
- 生活オリエンテーションの実施:
ゴミの分別方法、交通ルール、買い物の仕方などを実地で教えると理解が深まります。 - 日本語学習支援:
地域の日本語教室の紹介や、オンライン教材の活用もおすすめです。 - 医療機関の案内:
近隣の病院や診療所、休日・夜間の救急対応についても事前に説明しておきましょう。
地域とのつながりづくり
孤立を防ぐためには、地域との関係づくりも重要です。
- 地域イベントへの参加:
夏祭りや清掃活動などに参加することで、地域住民との交流が生まれます。 - ボランティア活動の紹介:
地域の日本語教室での交流会なども、実習生にとって貴重な経験になります。 - 自治体との連携:
市区町村の国際交流協会などと連携し、支援制度を活用しましょう。
行政手続きのサポート
来日直後は、さまざまな手続きが必要です。
- 住民登録・在留カードの手続き:
市役所での手続きに同行し、必要書類を事前に準備しておくとスムーズです。 - 保険加入・銀行口座開設:
健康保険や厚生年金、労災保険の加入、給与振込用の口座開設もサポートしましょう。 - 携帯電話の契約:
言語サポートのある通信会社を選ぶと安心です。
まとめ
外国人技能実習生の受け入れは、企業にとっても大きな学びの機会や今まで想定してこなかった良いことが発生します。
既存の日本人スタッフの活性化に繋がったり、地域社会との連携が強化されたり、認知が高まったり様々です。
外国人技能実習生が安心して働き、生活できる環境を整えることは、企業にとっても大きなメリットにつながります。
定着率の向上、生産性の向上、そして国際的な信頼の獲得。まずは「相手の立場に立つ」ことから始めてみませんか?