0011_特定技能で禁止されている行為とは?外食・宿泊・介護で注意したい違法スキーム事例

特定技能の受入れで「知らなかった」では済まされない禁止行為

特定技能制度は、人手不足が深刻な分野で、一定の専門性や技能を持つ外国人材を受け入れるための制度です。
受入れ企業には、適切な雇用契約の締結、1号特定技能外国人への支援、出入国在留管理庁への届出などが求められています。

しかし実務では、「採用できればよい」「登録支援機関に任せているから大丈夫」「現場で少し手伝ってもらっているだけ」といった感覚から、知らないうちに制度違反や労働法令違反に近づいてしまうことがあります。

特に、外食業、宿泊業、介護、飲食料品製造業、ビルクリーニングでは、現場の人手不足が強く、業務範囲や支援体制が曖昧になりやすい傾向があります。
本記事では、特定技能で禁止されている主な行為を整理し、今回は外食・宿泊・介護で起こりやすい違法スキーム事例を紹介します。

特定技能で禁止されている主な行為

特定技能の禁止行為は、大きく分けると次の5つに整理できます。

日本人と同等以上の報酬を支払わない

特定技能外国人と結ぶ雇用契約は、労働関係法令を遵守していることに加え、特定技能制度上の基準を満たす必要があります。
受入れ機関の基準として、報酬額が日本人と同等以上であることが示されています。
たとえば、同じ業務を行う日本人従業員よりも低い賃金にする、外国人だけ不利な手当体系にする、寮費や備品費などを過大に控除して実質的な手取りを低くするような運用は問題となる可能性があります。

分野外の業務に従事させる

特定技能外国人は、許可された分野に属する業務に従事することが前提です。
出入国在留管理庁は、特定技能外国人の受入れに関する運用要領や分野別運用要領を公表しており、介護、宿泊、外食など各分野ごとに従事できる業務が整理されています。
主業務に付随して発生する関連業務に従事することは認められる場合がありますが、専ら関連業務だけを行わせることは認められません。
介護分野でも、身体介護等に主として従事し、関連業務は付随的な範囲にとどめる必要があります。

1号特定技能外国人への支援を実施しない

特定技能1号では、受入れ企業が1号特定技能外国人支援計画を作成し、生活オリエンテーション、相談対応、日本語学習機会の提供、定期面談などの支援を行う必要があります。
支援は登録支援機関に委託することもできますが、支援が実際に行われていなければ問題になります。
書類上は支援計画があるものの、定期面談が形だけになっている、日本語学習支援が実施されていない、相談窓口が機能していないといった状態は、制度の趣旨に反する運用です。

無許可で職業紹介を行う

職業安定法では、「職業紹介」とは、求人及び求職の申込みを受け、求人者と求職者との間の雇用関係の成立をあっせんすることと定義されています。
そのため、「コンサルティング」「採用支援」「人材サポート」という名目であっても、実態として求人者と求職者をつなぎ、雇用成立をあっせんしていれば、職業紹介に該当する可能性があります。
職業紹介に該当する行為を行う場合には、原則として、職業紹介事業者の許可を取得する必要があります。

保証金徴収、違約金、旅券等の不当管理

特定技能外国人から保証金を徴収したり、退職や転職を理由とする違約金を定めたり、旅券や在留カードを会社側が不当に管理したりすることは、重大な問題につながります。
特定技能制度では、外国人本人が不当な費用負担や拘束を受けていないかどうかも重要な確認事項です。
特に、海外側の送出し機関や仲介者が関与する場合、本人負担の内容を受入れ企業側でも把握しておくことが大切です。

違法スキームはなぜ起きるのか

特定技能の違反は、最初から悪質な意図をもって行われるケースばかりではありません。
むしろ実務では、次のような理由から起こりやすくなります。

  • 現場の人手不足が深刻で、予定外の業務を任せてしまう
  • 支援業務を外部に委託したことで、企業側の確認が甘くなる
  • 採用を急ぐあまり、紹介・支援・営業代行の線引きが曖昧になる
  • 海外側で発生している費用負担を把握していない
  • 「業界ではよくあること」として慣習的に処理してしまう

特定技能制度では、雇用契約、業務内容、支援体制、紹介ルート、費用負担のすべてがつながっています。
一部だけ整っていても、全体として不適切な構造であれば、違法スキームと評価される可能性があります。

外食業で注意したい違法スキーム事例

事例1:外食で採用したのに、実態は清掃や皿洗いが中心

外食業では、飲食物調理、接客、店舗管理などの業務が想定されています。
外食業分野の運用要領でも、1号特定技能外国人は、試験等で確認された技能を用いて外食業全般の業務に従事することが前提とされています。
ところが、実際には清掃、皿洗い、ゴミ出し、倉庫整理ばかりを担当させているケースがあります。
これらが店舗運営に関連する業務であっても、主たる業務が外食業分野で想定される業務から外れている場合は注意が必要です。

実務上のチェックポイント

  • 調理、接客、店舗管理のいずれかに主として従事しているか
  • 清掃や皿洗いだけに固定されていないか
  • シフト表や業務日報で実態を説明できるか
  • 採用時の説明内容と実際の業務が一致しているか

事例2:無許可の仲介者が候補者集めから面接調整まで行う

外食業では採用スピードが重視されるため、自社SNS、知人、元従業員、海外側の関係者、国外人材の取り扱い未届けの職業紹介事業者などを通じて候補者を集めることがあります。
しかし、許可を持たない第三者が、求人企業と外国人候補者の間に入り、候補者紹介、面接調整、条件交渉、採用決定への関与を行っている場合、実態として職業紹介に該当する可能性があります。
職業安定法上の職業紹介は、求人者と求職者の間の雇用関係の成立をあっせんする行為とされています。
「紹介料ではなくコンサル料」「採用支援費」「業務委託費」といった名目にしても、実態が雇用成立のあっせんであれば、名目だけで遵法とはなりません。

宿泊業で注意したい違法スキーム事例

事例1:宿泊で採用したのに、客室清掃やベッドメイクに偏る

宿泊分野では、宿泊施設の運営に関わる業務が対象になります。
出入国在留管理庁の特定技能運用要領では、宿泊を含む各分野の要領別冊が整理されています。
宿泊施設では、フロント、接客、レストランサービス、企画・広報など幅広い業務があります。
一方で、人手不足から、特定技能外国人に客室清掃やベッドメイクばかりを任せてしまうことがあります。
客室清掃が宿泊施設の業務に関連することは事実ですが、それだけに固定されると、特定技能で想定される業務との整合性が問題になります。

実務上のチェックポイント

  • 宿泊分野で想定される中核的な業務に従事しているか
  • 客室清掃やベッドメイクだけに固定されていないか
  • 配置計画やジョブローテーションがあるか
  • レストランサービスにも従事する場合、食品衛生法に基づく飲食店営業の許可を取得しているか
  • 現場責任者が制度上の業務範囲を理解しているか

事例2:グループ会社内で自由に異動させる

宿泊業では、複数のホテルや旅館を運営している企業も多くあります。
そのため、繁忙期や人員不足に応じて、特定技能外国人を別施設に応援配置したくなる場面があります。
しかし、雇用契約上の所属先、就業場所、実際の指揮命令関係が曖昧なまま、別会社や別施設で常態的に働かせる運用は危険です。
雇用主と実際の就労先がずれる場合、在留資格上の問題だけでなく、労働者派遣や労働者供給の問題にもつながる可能性があります。
特定技能では、在留申請時に雇用契約や就業場所等が重要な確認対象になります。
グループ会社だから問題ない、応援だから問題ない、という単純な判断は避けるべきです。

介護分野で注意したい違法スキーム事例

事例1:介護で採用したのに、周辺作業ばかり担当させる

介護分野では、身体介護等の業務に主として従事することが求められます。
介護分野の運用要領では、身体介護等に加え、日本人が通常従事する関連業務に付随的に従事することは差し支えない一方、専ら関連業務に従事することは認められないとされています。
実務では、安全面や指導負担を理由に、外国人職員を清掃、物品補充、掲示物管理、リネン交換などの周辺業務に寄せてしまうことがあります。
しかし、こうした業務ばかりになってしまうと、介護分野の特定技能として求められる業務に主として従事しているとは言いにくくなります。

実務上のチェックポイント

  • 身体介護等の業務に主として従事しているか
  • 周辺業務だけに固定されていないか
  • 指導体制を理由に中核業務から外していないか
  • 介護記録やシフトで実態を説明できるか

事例2:夜勤や重い業務だけを外国人職員に偏らせる

介護現場では、夜勤、入浴介助、排せつ介助など負担の大きい業務があります。
これらを外国人職員だけに偏らせる運用は、不公平な待遇や職場定着の問題につながります。
特定技能外国人も、日本人職員と同じく労働者です。
外国人であることを理由に不利益な扱いをしたり、過度に負担の大きい勤務を固定化したりすることは避けなければなりません。

事例3:支援や相談対応が形だけになる

介護分野はシフト制や夜勤が多く、支援担当者と外国人職員の面談時間が取りにくいことがあります。
その結果、定期面談が書類上だけになったり、生活上の悩みや職場での不満が見えにくくなったりします。
1号特定技能外国人への支援は、受入れ企業または登録支援機関が適切に実施する必要があります。
支援を委託している場合でも、実際に相談対応や定期面談が機能しているかを確認することが大切です。

特定技能の違法スキームを防ぐための実務対策

業務内容を「職種名」ではなく「実態」で確認する

「外食で採用している」「宿泊で許可を取っている」「介護施設で働いている」というだけでは不十分です。
重要なのは、本人が日々どの業務に、どの程度の割合で従事しているかです。
業務日報、シフト表、職務分掌、現場責任者へのヒアリングなどを通じて、実態を確認する必要があります。

支援計画を作るだけでなく、実際に回す

支援計画は、在留申請のための書類ではなく、受入れ後の運用ルールです。
事前ガイダンス、生活オリエンテーション、相談対応、日本語学習機会の提供、定期面談などが、実際に行われているかを確認しましょう。
支援記録が残っているか、本人が内容を理解しているかも重要です。

紹介・支援・営業代行の役割を分ける

特定技能の受入れでは、海外送出し機関、日本側紹介事業者、登録支援機関、受入れ企業など、複数の関係者が関与します。
そのため、誰が求人を受け、誰が求職者を集め、誰が面接調整を行い、誰が支援を実施するのかを明確にする必要があります。
特に、無許可の者が実質的に雇用成立をあっせんする構造は危険です。
契約書の名称ではなく、実際に何をしているかで判断されます。

外国人本人の費用負担を確認する

海外側で発生している費用について、受入れ企業が全く把握していないケースもあります。
しかし、保証金、違約金、過大な手数料、名目不明の研修費などが発生していると、本人の負担が重くなり、入国後のトラブルや離職につながる可能性があります。
受入れ前に、本人がどのような費用を負担しているのか、十分に理解しているかを確認することが重要です。

よくある質問

Q. 宿泊や介護の特定技能外国人に清掃をお願いすることはできますか

関連業務として付随的に行うことはあり得ます。
ただし、清掃だけ、皿洗いだけ、物品補充だけといった形で、専ら関連業務に従事させることは問題になる可能性があります。
重要なのは、各分野で想定される主たる業務に従事しているかどうかです。

Q. 登録支援機関に全部委託していれば安心ですか

登録支援機関に全部支援を委託することは可能です。
ただし、支援が実際に行われていなければ問題になります。
信頼できる登録支援機関なのか?
実際に面談、相談対応、日本語学習支援、生活支援などが機能しているかを確認することが大切です。

Q. 受入れ時に支払う費用の中で人材紹介に該当する部分を「紹介」ではなく「採用サポート」と言えば問題ありませんか

名称だけで判断されるわけではありません。
求人者と求職者の間に入り、雇用関係の成立をあっせんしている場合は、職業紹介に該当する可能性があります。
職業紹介の定義は職業安定法に明記されていますが、まずは職業紹介事業の許可を得ているかどうかの確認が必要でしょう。

この記事の参考リンク

ISA(出入国在留管理庁)特定技能制度 受入れ機関の方
外務省 登録支援機関について

まとめ


免責
本記事は、特定技能制度に関する一般的な情報提供を目的として作成したものであり、個別事案に対する法的助言を行うものではありません。
実際の業務内容、契約関係、支援体制、費用負担の構造によって判断が分かれる場合があります。具体的な案件については、所管行政機関または専門家へご確認ください。