0008_特定技能の分野別上限|充足率40%超の飲食料品製造業、建設業、航空、介護、農業、自動車整備

外食業の受入れ停止は、他人事ではない

外食業における特定技能の受入れが、上限到達により新規の受入れは実質的に停止しました。
現場でも「採れなくなってきた」という声が増えていて、この変化はすでに“肌感覚”として感じている方も多いと思います。
ただ、このニュースを「外食業だけの話」と捉えてしまうと、少しもったいないです。
特定技能制度は、もともと分野ごとに受入れ枠(上限)が設定されている仕組みです。
つまり、外食業で起きたことは、

他の分野でも、いずれ起こり得る変化

ということでもあります。

そもそも「受入れ停止」はどういう仕組みで起こるのか

特定技能制度では、各分野について5年間の受入れ見込数が定められており、これは実務上受入れ上限として運用されます。
2024年3月29日の閣議決定では、2024年度から2028年度までの新たな受入れ見込数が設定され、外食業分野の特定技能1号は5万3,000人、、宿泊は2万3,000人、介護は13万5,000人、飲食料品製造業は13万9,000人などとされました。
そして、在留者数が受入れ見込数を超えることが見込まれる場合には、入管法に基づき、在留資格認定証明書交付の停止や、在留資格変更許可申請の抑制といった調整が行われます。
実際、外食業分野では2026年4月13日以降に受理した認定証明書交付申請は不許可となり、同日以降の新規の在留資格変更許可申請も原則不許可とされました。

他の分野はどこまで上限に近づいているのか

2025年末時点で、日本全体の在留外国人数は412万5,395人となり、初めて400万人を超えました。
そのうち在留資格「特定技能」は39万人で、前年末から10万人増と大きく伸びています。
制度全体がこれだけのスピードで拡大している以上、外食業だけを特別扱いして考えるのは危うでしょう。
むしろ、次にどの分野が上限へ近づくのかを冷静に見ておく必要があります。
特定技能は、いまや「制度としてある」段階ではなく、現場の人手不足を実際に支える基盤へとなりつつあると考えるべきでしょう。

特定技能1号の主な分野別「充足率・不足率」(2025年12月末時点)

分野在留人数受入れ見込数充足率不足率
外食業43,86953,00082.8%17.2%
飲食料品製造業93,393139,00067.2%32.8%
建設49,32380,00061.7%38.3%
航空2,2604,40051.4%48.6%
介護67,871135,00050.3%49.7%
農業37,95278,00048.7%51.3%
自動車整備4,56010,00045.6%54.4%
工業製品製造業56,736173,30032.7%67.3%
造船・舶用工業11,20436,00031.1%68.9%
漁業4,59017,00027.0%73.0%
ビルクリーニング8,39537,00022.7%77.3%
宿泊1,96823,0008.6%91.4%
鉄道543,8001.4%98.6%
自動車運送業15124,5000.6%99.4%
木材産業155,0000.3%99.7%
林業01,0000.0%100.0%

※充足率=2025年12月末の在留人数 ÷ 2024~2028年度の受入れ見込数
※充足率の高い順で記載
※不足率=100%-充足率
※筆者計算。人数・受入れ見込数は法務省・出入国在留管理庁および閣議決定資料による。

まだ余地はあるが、安心はできない分野

たとえば、介護の充足率は50.3%、農業は48.7%で、見た目には「まだ半分程度」とも見えます。
ただし、特定技能全体は2025年末時点で39万人に達し、そのうち介護は6万7,871人と大きく伸びています。制度全体の伸びが続けば、これらの分野も数年先ではなく、もっと早いタイミングで景色が変わる可能性があるでしょう。
特に介護は、高齢化の進行によって需要側の圧力が強く、政策的な注目度も高いです。
単純に「まだ空きがある」と受け止めるのではなく、制度の枠が残っているうちに、受入れ体制の整備を前倒しで進めた企業が有利になる分野と捉えた方が建設的な運営ができるでしょう。

介護は「半分」ではなく「もう半分」

介護は充足率50.3%。
これを見ると「まだ余裕がある」と感じる方もいるかもしれません。
でも実際の現場感覚としては、少し違います。

  • すでに約6.7万人が在留
  • 今後も需要は確実に続く
  • 制度活用の企業も増加中

こうした状況を踏まえると、

介護はまだ余裕がある分野ではなくいま対応しておいた会社が強くなる分野

と捉えた方が建設的でしょう。
特に介護は、採用よりも「定着」が成果を分ける分野です。

宿泊とビルクリーニングは「余白がある」分、差が出やすい

一方で、

  • 宿泊:8.6%
  • ビルクリーニング:22.7%

このあたりは、まだかなり余白があります。ただ、ここは誤解しやすいポイントで、

「空いているから簡単」ではなく「準備している企業が少ない分、差が出やすい」

分野です。
たとえば宿泊なら、

  • 日本語レベル(接客)
  • 繁閑の差
  • 業務の分解(客室・裏方など)

こういった設計が必要になります。
ビルクリーニングも、

  • 作業教育
  • チーム体制
  • 現場管理

を整えられるかで結果が変わります。
だからこそ、

今から準備できる企業には大きなチャンス!

でもあります。

充足率が低い分野は「採りやすい」のか

宿泊の充足率は8.6%、ビルクリーニングは22.7%、鉄道は1.4%、自動車運送業は0.6%
数字だけを見ると「まだ余裕がある」と映りますが、そこには別の事情があります。
「制度が新しい」「業務要件が重い」「国内制度との接続に時間がかかる」といった理由から、そもそも立ち上がりが遅い分野もあります。
自動車運送業や鉄道は、外国人材の導入プロセス(資格取得等)や実務運用(安全管理等)の整備を進めるのが難しい面があります。この壁を乗り越えた企業が出てくると充足率は一気に加速するでしょう。
今の低充足率を「人気がない」と短絡的に捉えるのではなく、これから制度浸透が進む前段階と見るほうが実態に近いと考えます。

まとめ


免責
本コラムは、実務目線で関係法令の考え方・読み取り方等を整理したもので、個別案件に対する最終判断を示すものではありません。
具体的な対応にあたっては関係機関や専門家への確認を前提としてください。