0006_職業安定法の考え方に照らした「罰則対象になり得る」典型例

これは罰則対象になります|フィクション事例集

以下はすべて架空の事例ですが、実際の職業安定法の考え方に照らすと「罰則対象になり得る」典型例です。
「知らなかった」「善意だった」「うちは紹介業じゃない」という理由は、判断においてほとんど考慮されません。

【職業紹介事業者】

ケース①|国外紹介なのに国内紹介の感覚で対応

外国在住の知人から「日本で働きたい人がいる」と相談を受け、履歴書を取りまとめ、日本企業へ推薦。
オンライン面接の段取り、雇用条件の説明まで行い、採用後に紹介料を受け取った。
国外にわたる職業紹介の追加許可は取得していなかった。

👉
求職者が国外にいる時点で、「国外にわたる職業紹介」に該当。
通常の有料職業紹介許可だけでは足りない。これは国籍の如何に依らず、日本国籍の方でも在住が国外の場合は「国外にわたる職業紹介」に該当します。

ケース②|登録支援業務と紹介業務の線引きミス

登録支援機関として活動するB社が、支援中の外国人について「人柄も良いので他社でもどうか」と別企業へ推薦。
結果的に雇用契約が成立し、紹介の謝礼としてコンサル費名目で金銭を受領。

👉
名目がコンサル費でも、実態が雇用あっせんなら職業紹介。
立場(支援機関)ではなく行為の中身で判断されます。

ケース③(一般企業も該当)|職業紹介事業者でない者への直接・間接的支払い

有料職業紹介事業者でない個人または法人から、直接または間接的に候補者や受け入れ企業のあっせんを受けた技能実習制度の監理団体や特定技能制度の登録支援機関が人数に応じたコンサル費を渡した。

👉
有料職業紹介事業者ではない者がいかなる名目であっても収入を得ることは禁止されています。
名目がコンサル費でも、実態が雇用あっせんなら有料職業紹介事業となります。

【一般企業】

ケース①|グループ会社間だから大丈夫と思っていた

親会社C社が、人手不足の子会社D社に対し、自社で採用予定の応募者を振り分ける形で紹介。
条件調整・面接設定も行い、人件費調整の一環として紹介対価を清算していた。

👉
グループ内でも「求人者と求職者の間に立ち、雇用成立をあっせん」すれば職業紹介。
内部取引かどうかは免罪符になりません。

外注先から人手不足の相談を受け、「知り合いを紹介しますよ」と声をかけた。
候補者に仕事内容・条件を説明し、企業側と条件のすり合わせまで実施。
後日、紹介のお礼として業務委託費を上乗せしてもらった。

👉
お礼・謝礼・上乗せなど、名称不問。
採用結果と金銭が紐づいた時点でアウトの可能性があります。

ケース③|人事代行のつもりが紹介扱いに

採用支援を請け負う一般企業が、求人原稿作成だけでなく、応募者の選別・推薦まで実施。
最終的に採用決定率に応じた報酬体系になっていた。

👉
成功報酬型+推薦行為は、職業紹介と評価されやすい。
「代行」「コンサル」の看板は関係ありません。

【個人】

ケース①|知人同士をつないだだけのつもりだった

知人経営者から「誰か良い人いない?」と聞かれ、別の知人を紹介。
面談に同席し、双方の条件を調整。
採用後、「助かったから」と現金を受け取った。

👉
個人であっても、対価が発生すれば職業紹介と判断される可能性があります。

ケース②|SNS経由の軽い仲介

SNSで仕事を探している投稿を見て企業を紹介。
やり取りを仲介し、面接日程を調整。
紹介成立後、ギフト券を受領。

👉
金銭か否かを問わず、経済的利益の授受は対価になります。

ケース③|ボランティア感覚だったが…

外国人留学生から就職相談を受け、日本企業を紹介。
在留資格の話も含めて企業側へ説明し、結果的に雇用成立。
報酬はないが、別件の仕事を優先的に回してもらった。

👉
形式上無償でも、実質的な利益供与があればリスクあり。
外国人案件は特に慎重な線引きが求められます。

ケース④|職業紹介事業者から入社お祝いをもらった

自社案件で転職された方に転職祝いのギフト券をくれる職業紹介事業者の支援を受け見事に転職成功。
入社3か月後に職業紹介事業者からギフト券を受領。

👉
労働者に金銭やギフト券等を提供することは原則禁止されています。

まとめ|「人を紹介する」行為で最も重要な判断軸

職業安定法の考え方は、日本人・外国人を一切区別しません。
人を紹介する行為は、ビジネス・善意・関係性の延長線上で起こりがちですが、“雇用のあっせん”と評価された瞬間、立場を問わず法規制の対象になります。
外国人か日本人かは本質ではない特定技能・技能実習・留学生であっても日本人の正社員・アルバイトであっても
「雇用関係の成立をあっせんしたかどうか」
これが判断の中心です。

共通して「罰則対象になり得る」ポイント

次の要素が重なると、立場を問わず職業安定法上の職業紹介と判断される可能性が高くなります。

✅ 求人者(企業)と求職者(人)の間に入っている
✅ 面接調整、条件調整、マッチングなどに関与している
✅ 採用(雇用成立)を目的としている
✅ 採用の結果として金銭・謝礼・成功報酬を受け取っている
✅ 必要な許可(有料職業紹介・国外紹介など)を持っていない

👉有料職業紹介事業者/一般企業/個人の違いは関係ありません。

よくある誤解と実際の考え方

誤解①
「本業じゃないから大丈夫」
❌ 本業か副業かは関係ない
✅ 行為の“中身”だけで判断される

誤解②
「善意で紹介しただけ」
❌ 善意でも雇用あっせん+対価があればアウト
✅ 完全な無償・非調整の情報提供に留まる必要あり

誤解③
「人材紹介会社じゃないから大丈夫」
❌ 一般企業・個人も普通に対象
✅ 許可がないなら、紹介行為自体を避けるべき

外国人紹介で特に注意すべき追加ポイント

外国人材の場合、これに加えて次のリスクが上乗せされます。
在留資格と業務内容の不一致
「国外にわたる職業紹介」許可の有無
本来できない立場(登録支援機関・教育事業者等)での紹介行為

👉国内採用よりも監督・チェックが厳しくなりやすい分野だと認識しておく必要があります。


免責
本コラムは、実務目線で職業安定法の考え方を整理したものですが、個別案件に対する最終判断を示すものではありません。制度運用は状況により大きく異なるため、具体的な対応にあたっては関係機関や専門家への確認を前提としてください。