0002_インバウンド拡大と外食産業の人材需要:東京・大阪・愛知の現状は?

外食産業の人材不足は深刻

近年の訪日外国人(インバウンド)急増により、東京や大阪など主要都市の外食業界はコロナ前を大きく上回る集客回復猛烈な人材不足が同時に進行しています。
2025年には訪日外国人旅行者数が年間約4,268万人(2019年の約3,188万人を35%も上回り過去最高)に達し、飲食店の約64%が非正規スタッフ不足という深刻な状態に直面しました。
特にホールスタッフや調理スタッフの需要が急拡大している一方、その供給は大幅に追いつかず、2025年12月時点で調理関連職の有効求人倍率は全国平均で約2.9倍(東京都:約3.5倍、名古屋市:約3.0倍、大阪:約2.8倍)に達しています。

三大都市圏におけるインバウンド需要の現状と予測

2024年の訪日外国人は全国で約3,687万人とコロナ前の2019年(約3,188万人)を上回り史上最多となりました。さらに2025年には約4,268万人に達し、日本政府が目標とする2030年6,000万人に向け大きく前進しています。

主要都市別インバウンド状況(2024年)

都市・地域外国人旅行者数外国人延べ宿泊者数インバウンド訪問比率
東京約2,479万人約5,680.4万人泊48.3%
大阪約1,464万人約2,539.4万人泊43.0%
愛知約189万人約390.5万人泊6.3%

※「インバウンド訪問比率」とは、ある都市や地域における「訪日外国人旅行者数」が、その都市を訪れた「全旅行者数(日本人+外国人)」に占める割合を示す指標です。
出展:東京都産業労働局_2024年(令和6年)東京都観光客数等実態調査 
   観光庁_宿泊旅行統計調査(2024年・年間値(確定値)) 

東京・大阪では観光客の街頭混雑や宿泊施設の稼働率上昇が顕著で、一方、名古屋市は「インバウンドの空白地帯」とも報じられ、訪日客の誘致が今後の課題とされています。

今後の見通し

インバウンド需要は2026年以降も堅調な伸びが見込まれます。
政府は2030年までに訪日客6,000万人・消費額15兆円の目標を設定し、地方誘客や長期滞在の促進策を展開中です。インバウンド市場の拡大トレンドは中長期的にも続く公算が大きく、外食産業にとっては市場拡大の好機となる一方、その受け皿となる人材確保が最大のボトルネックとなっています。

外食業界のホール・調理スタッフ需要の推移と将来見通し

深刻化する人材不足

日本の外食産業ではコロナ禍前から慢性的な人手不足が続いていましたが、コロナ後の需要急回復でホールスタッフや調理スタッフの求人は一段と増加し、採用難が一層顕著になっています。
コロナ禍で外国人労働者が一時帰国・離職した後、戻ってくる人材が少なかったことや、国内の求職者が飲食業を敬遠する傾向が強まったこともあり、多くの飲食店で求人を出しても応募が集まらない状況が生じています。
厚生労働省の統計によると、2025年6月時点の「飲食物調理の職業」における有効求人倍率は約2.97倍に達し、求職者1人当たり求人がほぼ3件ある計算です。これは他産業と比べても高水準で、人材需給のミスマッチが大きいことを示しています。

高まる人材獲得競争

人材不足に歯止めがかからない中、飲食業界の採用コストは年々上昇しています。
とりわけ都市部ではアルバイト時給の上昇や、採用広告・人材紹介会社への支出増が顕著で、正社員1名あたりの採用費用が50万~100万円に達するケースも散見します。また、人手不足によるサービス品質の低下→顧客離れ→売上減少という悪循環を防ぐために、各社は人件費の増加を受け入れてでも人材を確保せざるを得ない状況です。
その結果、2024年の飲食事業者の倒産件数は894件と前年比16.4%増となり(過去最多を更新)、人件費負担や営業時間短縮が業績に影響を及ぼしている現状がうかがえます。

将来見通し

少子高齢化による若年労働力の減少と、飲食現場の労働環境への敬遠感(きつい・厳しい・低賃金という3Kイメージ)も相まって、外食人材不足は構造的課題となっています。
厚労省調査では、「宿泊業・飲食サービス業」の新卒3年以内離職率は51.4%と全産業平均を大きく上回り、若手の定着が難しい業界です。この傾向が続けば、今後も人材需要は高止まりし、人手不足状態が常態化する可能性が高いでしょう。一方で、最低賃金の大幅引き上げや各社の働き方改革が進めば、長期的には労働環境改善を通じて採用難が緩和される余地もあります。
いずれにせよ、外食業界の成長には人材問題の解決が不可欠であり、効果的な対策が求められます。

  • 人材不足の深刻化:2025年6月時点で「飲食物調理の職業」の有効求人倍率は約2.97倍。
  • 採用コストの上昇:都市部では正社員1名あたりの採用費用が50万~100万円に達するケースも。
  • 将来見通し:少子高齢化と労働環境への敬遠感により、外食人材不足は構造的課題に。

インバウンド需要拡大による人材不足の実態・課題

「おもてなし」の現場で顕在化する人手不足

訪日観光客の急増は日本の飲食店に活況をもたらしましたが、その裏でサービス現場の人手不足が一層深刻化しています。
インバウンド客は日本食への関心が高く、旅行中の支出でも「飲食」は最も大きな割合を占めています。
その結果、繁華街の飲食店や観光地の飲食施設には外国人客が押し寄せ、提供スピードや接客の質に影響が出る店舗も増加しています。「注文しても料理が出るのが遅い」「テーブルの後片付けが追い付いていない」などといった声が消費者から挙がっており、4割以上の日本人外食利用者がこの1年で人手不足によるサービス低下を感じたとする調査もあります。
このままではせっかくのインバウンド需要を顧客満足度低下で逃してしまい、機会損失になるやもしれません・・・。

語学・多言語対応の壁

インバウンド対応における言語の課題も大きくクローズアップされています。
東京や大阪の人気店では、英語・中国語など多言語で注文や案内ができるスタッフの確保が望まれますが、人手不足の状況下で全スタッフに高い語学力を求めるのは現実的ではありません
そこで多くの店舗がタブレットによる多言語メニュー表示や自動翻訳機能の導入を進めています。
タブレット注文システムは言葉の壁を下げるだけでなく、省人化効果もあるため、接客の負担軽減と外国人客の満足度向上に貢献しています。また、キャッシュレス決済への対応も必須です。海外からの観光客は現金を持ち歩かない場合も多く、主要なクレジットカードやモバイル決済を導入することでスムーズな会計会計業務の効率化が可能になります。

労働環境・待遇面の課題

インバウンド需要を取り込もうとする飲食店では、営業時間の延長や繁忙時間帯の増加によって既存スタッフの負荷増も避けられません。
もともと外食産業は「長時間労働・低賃金」のイメージが強く、過酷な労働環境が若年層の敬遠や従業員の早期離職を招いてきました。人手不足の中で一人当たりの業務量が増せば、これらの問題はさらに深刻になります。
こうした状況を改善しない限り、人材確保は困難であり、せっかくの需要拡大も持続可能な成長には繋がりません。給与の適正化働き方改革による労働時間短縮職場環境の改善など、業界全体で魅力ある雇用条件を整備していくことが急務です。

  • 語学・多言語対応の壁:英語・中国語など多言語での接客が求められるが、全スタッフに高い語学力を求めるのは困難。
  • 労働環境・待遇面の課題:長時間労働・低賃金のイメージが強く、若年層の敬遠や早期離職を招いている。

外食産業の人材確保・育成の取り組みと成功パターン

深刻な人手不足を受けて、外食各社では人材確保とサービス向上に向けた様々な施策を講じています。大きく3つの方向性が見られます。

労働環境・待遇の改善

「選ばれる職場」になることを目指し、給与引き上げや労働時間の見直し、休暇の充実などに踏み切る企業が増えています。
例えば大手チェーンでは24時間営業の廃止深夜手当の増額有給休暇の取得推進などを実施し、働きやすさをアピールしています。また評価制度の明確化研修制度の充実によって、スタッフ一人ひとりの成長とキャリア形成を支援し、モチベーション維持と定着率向上を図る動きも見られます。これらの取り組みは単なる福利厚生ではなく、結果としてサービスの質向上と生産性アップに直結するものです。

デジタル技術の活用(DX)・省人化

テクノロジー導入による業務効率化も急務です。
モバイルオーダーシステムやセルフレジ、配膳ロボットの導入は、注文・会計や配膳の手間を減らし、スタッフが接客や調理など本来注力すべき業務に集中できる環境を作ります。自動化で人件費負担を抑えつつサービスレベルを維持できるため、小規模店舗から大手チェーンまで導入が拡大しています。スマホ注文や自動レジを取り入れたある飲食店では、ホール業務の効率アップと顧客満足度向上を両立したとの報告があります。また、現金等の管理業務やリスクが激減し、店舗側の運営管理や事故対応に割く金銭的・心的負担も軽減します。さらにDXは多言語対応にも資するため、インバウンド客への説明やオーダーをタブレットで実施し客単価が上昇した成功事例も見聞きします。

外国人材の積極採用と戦力化

特定技能制度や留学生の資格外活動を活用し、アジア諸国を中心とする外国人スタッフを受け入れる企業も増加しています。
ホールでの英語・中国語対応や多文化理解に優れた人材は、インバウンド客への対応力向上に貢献し、結果として口コミ評価の向上や売上アップに繋がります。あるラーメンチェーンではベトナム人の特定技能1号スタッフを採用して慢性的な人員不足を解消し、月商増・店舗稼働率増を実現したそうです。多言語メニューとタブレット注文を導入した店舗さんでは、外国人客の料理理解を助けた結果、客単価が向上し店舗評価サイトの得点も大幅にアップしたそうです。
外国人材の活用は人手不足解消だけでなく、売上拡大やサービス力向上に直結する可能性が示されています。

成功企業に共通するポイント

前記の取り組みの中でも、特に人材育成と定着に注力している企業ほど成果を上げています。
外国人スタッフを採用した企業では、多言語対応の動画マニュアルを活用して教育期間を短縮したり、ベテラン社員がメンターとなるOJT制度を整備し、スタッフの不安解消に努めています。
特定技能制度を活用して外国人材を導入している企業では、特定技能2号への移行(在留無期限化)や正社員登用などキャリアパスの明示住居の手配や生活サポートによる安心感の提供などによって、外国人スタッフの定着率向上を実現した例もあります。
日本人スタッフにとっても、DXツールの活用や人員増で業務負荷が軽減され働きやすくなるといったプラス効果が報告されており、職場全体の定着率改善と生産性向上に繋がっています。

  1. 労働環境の改善:給与水準の引き上げ、労働時間の是正、休日の確保など。
  2. デジタル技術の活用(DX):モバイルオーダー、セルフレジ、配膳ロボットなどの導入。
  3. 外国人材の積極採用:特定技能制度や外国人留学生の資格外活動を活用し、語学力や多文化理解を持つ人材を採用。

特定技能制度を活用した外国人材定着への具体策

教育体制の充実:

特定技能の外国人スタッフを受け入れる際は、入国後の研修・OJT体制を整え、迅速に即戦力化することが重要です。
具体的には、日本語習得やサービススキル向上のために多言語の動画マニュアルを用意したり、ベテラン社員によるマンツーマンの指導(メンター制度)を導入し、言葉・文化の壁を乗り越えやすい環境を提供します。
また、定期的な面談で業務上・生活上の悩みを聞き取り、早期に問題を解決することも定着促進に効果的です。
これらの施策で現場への適応スピードが上がり、離職リスクを低減できます。

キャリアパスの明示

特定技能1号で採用した外国人が将来的に特定技能2号(在留制限のない就労資格)や正社員への登用を目指せる道筋を示すことも、モチベーション維持に有効です。
実績のある企業では、特定技能1号として現場経験を積み、3~5年目に技能試験と日本語試験にチャレンジし、条件を満たした後に特定技能2号へ移行するまでのロードマップを本人と共有しながらサポートしています。料理長や店舗マネージャーへの昇格機会を明確に提示し、必要なスキル習得を計画的にバックアップすることで、スタッフの将来展望が開け、長期定着(5年以上の就労)に繋がっています。企業にとっても一度戦力化した人材が長く働いてくれれば、人材補充コストの削減と安定的な店舗運営が実現できる良施策になるでしょう。

生活・定着支援の強化

外国人スタッフが安心して力を発揮できるよう、職場外での生活支援にも取り組みます。
具体的には、社員寮や住居の確保行政手続きのサポート(銀行口座開設・住民登録など)病院や公共サービスの案内困り事の相談体制(母国語対応スタッフ配置や通訳の手配)など多岐にわたります。
また、日本人従業員との交流イベントを実施して相互理解を促進する、多文化共生研修でお互いの文化や習慣を学ぶ機会を作るなど、チームの一体感を育む工夫も効果的です。
これらの支援は決して特別扱いではなく、外国人スタッフが生活上の不安を減らし職場に定着するための投資と位置付けられます。生活支援や交流促進に積極的な企業では外国人スタッフの定着率向上が報告されており、彼らが戦力として長く活躍することで職場に良い影響を与えています。
とはいっても全部を企業(店舗)で行うのは難しいですよね。そういう場合は登録支援機関を利用することをお勧めします。

特定技能って何?登録支援機関って何?

当社HPの記事をご覧ください。
特定技能入門
第1回:特定技能ってなに?制度の全体像をつかもう
第5回:登録支援機関とは?選び方と活用のポイント

  • 教育体制の整備:多言語マニュアル、OJT制度、定期面談。
  • キャリアパスの明示:特定技能2号や正社員登用への道筋を提示。
  • 生活支援の強化:住居確保、行政手続き支援、日本人スタッフとの交流イベント。
  • 制度活用:特定技能制度や登録支援機関の活用。

まとめ

インバウンド需要は今後も成長が見込まれる一方、外食産業の人材不足はすぐには解消しません。
しかし、特定技能制度をはじめとする外国人材受け入れスキームを活用し、教育・サポート体制を整えることで、人材不足を乗り越える道は拓けます
東京や大阪のようなインバウンド主要都市では外国人スタッフがホスピタリティの最前線を担う時代が到来しています。
外食企業は、多様な人材が長く活躍できる環境づくりを戦略的に進める必要があります。
特に、外国人材の即戦力化と定着を図る具体的な施策(教育研修・キャリアパス構築・生活支援など)は、インバウンドの好機を持続的な成長につなげる鍵となるでしょう。
政府の支援も追い風に、人材戦略とサービス革新を両輪に、貴社がこのインバウンド時代を勝ち抜いていくことを祈念しています。