この記事でわかること
- 2026/1/1施行の改正で、“名目を問わない有償の書類作成”の違法性が条文上より明確化された。
- 両罰規定の整備により、違反行為者だけでなく法人側にも罰金が科され得る場面が整理された。
- 外食・宿泊・ビルクリーニング・飲食料品製造など外国人雇用が多い業界は、手続きの外注の線引き・証跡管理・契約の見直しが実務の要点。
はじめに
外国人スタッフが当たり前に働く光景は、外食や宿泊だけでなく、ビルクリーニングや食品製造でも“日常”になりました。
そこで必ず出てくるのが、在留資格の更新・変更・認定など、行政への申請手続きです。
一方で「誰が、どこまで、手続きを手伝ってよいのか」は現場で混線しがちでした。
2026年1月1日施行の行政書士法改正は、この混線を『“名目”ではなく“実態”で整理する方向』を明確にしています。
改正の前提:施行日と全体像
今回の改正(令和7年法律第65号)は、令和8年(2026年)1月1日施行です。
内容は大きく5点(使命・職責、特定行政書士の範囲、業務制限の趣旨明確化、罰則整備、両罰整備)で、特に企業実務では**第19条(業務制限)と第23条の3(両罰)**が重要になります。
① いちばん重要:「いかなる名目でも報酬」=第19条の趣旨明確化
改正により、第19条の業務制限に**「他人の依頼を受け いかなる名目によるかを問わず 報酬を得て」**という趣旨が条文上明確になりました。
ポイントは、請求書の名目が「サポート費」「コンサル料」「会費」などでも、実態が“官公署に提出する書類の作成”の対価なら該当し得る、という整理が前面に出たことです。
② 見落としがち:両罰規定の整備で「法人側」も問われうる
改正は、違反行為者だけでなく、一定の場合に法人にも罰金刑が科され得る両罰規定を整備しました。
日行連の説明でも、第19条違反に関して行為者に加えて所属法人が罰金刑の対象となり得ることが述べられています。
③ “理念+DX”は実務の追い風:使命・職責の明文化(補足)
改正では、行政書士の「使命」が明文化され、「職責」として品位保持・法令実務への精通・公正誠実、そして**デジタル社会への対応(ICT活用の努力義務)**が規定されました。
企業側から見ると、手続きが電子化・オンライン化するなかで、適法な専門家と連携し、社内フローをデジタル前提で整えることが、結果的にコストとトラブルを減らす方向に働きます。
外国人雇用の現場で起きやすい「グレー運用」
以下は“やりがち”だけど、改正の趣旨からすると見直し対象になりやすいパターンです(※個別判断は契約・実態次第)。
- 支援委託費(月額)に、申請書類作成の実作業が実質含まれている(名目が支援でも、実態で判断)。
- 登録支援機関や人材紹介会社が「下書き」「入力代行」「理由書作成」まで行い、対価がセットに内包されている(名目で逃げない整理が明確化)。
- 誰が作成したかの証跡(メール、発注書、成果物)が残っていないため、後から説明できない。
業界別:今すぐできる簡易チェック
(外食業、宿泊業、ビルクリーニング業、飲食料品製造業)
外食業(特定技能・留学生アルバイトが混在しやすい)
- 支援委託費・紹介料の内訳に「書類作成」が紛れ込んでいないか(見積・請求・契約書で確認)。
- 店舗ごとに「必要情報の収集→行政書士へ依頼→提出→保管」の担当と期限を固定化。
宿泊業(採用数が増えると更新が“波”で来る)
- 更新月の集中を避けるため、在留期限の台帳を整備(人事・現場が同じ表を見られる形)。
- 外注先(支援機関・人材会社)がやる作業範囲を、支援と書類作成で明確に分離して契約に落とす。
ビルクリーニング業(現場が分散し、情報が散りやすい)
- 現場責任者は「事実情報の回収」に集中(勤務実態・配置・教育記録など)。書類“作成”は適法な体制へ。
- 誰が何を作ったか(証跡)を、案件フォルダに自動保存する運用に寄せる。
飲食料品製造業(監査・品質と同じく“手続きも監査対象”へ)
- 社内手順書(SOP)化:「収集→確認→依頼→提出→保管」までを工程化。
- 外部委託の棚卸し:名目の違う“パッケージ”に実作業が含まれていないか、年1回点検。
まとめ:今日からやる「3つ」
- 契約の棚卸し:支援委託費・紹介料・コンサル費に書類作成対価が混入していないか確認。
- 社内フローの明文化:誰が情報収集し、誰が作成し、誰が保管するかを固定。
- 証跡管理:作成主体が説明できる発注・成果物・やりとりを案件ごとに保存。
企業担当者や登録支援機関担当者からよく寄せられる質問
Q1. 2026年1月1日から何が変わったの?
いろいろ変わったけど、特定技能に関係しそうなのは、第19条(業務制限)と第23条の3(両罰)が重要かな。第19条に「いかなる名目でも報酬」といった趣旨が明確化され、両罰規定も整備されました。
Q2. “サポート費”名目なら大丈夫?
ダメかも。名目より実態で判断される整理が明確化されています(実態が書類作成の対価なら要注意)。
Q3. 登録支援機関に任せてきたけど、全部NG?
そんなことはないかな。何が“支援”で何が“書類作成”かの切り分けが要点です。契約と実務範囲を棚卸ししましょう。
Q4. 企業の人事が自社の申請準備をするのは?
OK。企業が当事者として準備する行為はOKです。第三者が報酬を得て作成する行為は注意が必要です。
Q5. 両罰規定って何が怖いの?
違反行為者だけでなく、依頼側(企業)も罰金刑の対象になることです。
Q6. まず何から手を付ければいい?
①契約(名目・内訳)の確認、②実務フローの確認、③書類作成の一連の流れの証跡の確認をすると良いでしょう。
7) 参考リンク
- 総務省通知PDF(改正法公布・趣旨) [soumu.go.jp]
- 衆議院:行政書士法の一部を改正する法律(条文) [shugiin.go.jp]
- 日本行政書士会連合会:成立に関する会長談話 [gyosei.or.jp]
- 日本行政書士会連合会:第19条・第23条の3改正の趣旨 [gyosei.or.jp]